ramenhenzinのブログ

鶏 豚 魚介 カエシ 啜り命

「醤油らーめん」 支那そばや(東松島)

2018年9月14日 オープン11時訪問

 

約3ヶ月ぶりです
水曜が定休日になったとの情報を入手していた為、ということは「塩の日が廃止か?」と気になっておりました(これは結局の処、不明でした)

f:id:ramenhenzin:20181112215222j:image

そして
久しぶりに「支那そばや(東松島)」のらーめんに触れてみたくなりました

 

金曜の11時過ぎ到着
今日は並びは無く、すんなり入店

f:id:ramenhenzin:20181112215308j:image

計20名着席可能なU(コ)字型のカウンターのみでテーブル席は無し

新しい女性スタッフさんが2名居ます
食券を渡し、席の誘導を受けます

 

広めのオープンキッチンで、一杯一杯が作られて行くプロセスが丸見えです

 

店主さん、相変わらず、らーめんを作る姿がカッコいい
アイロンがキチンと行き届いたコックコートの似合い具合に痺れます
接客も程よく良い寡黙な職人さんという感じですね


前回レビューにも書いた通り、一杯が作られるプロセスに魅入ってしまいます

 

一杯が出来上がるまでの流れ
ステンレス容器1醤油ダレを丼に投入
ステンレス容器2オイルを丼に投入
鶏豚魚介ブレンドスープの巨大寸胴から、先ずは上澄みの脂が投入
上記寸胴から、脂を引いた清湯スープを投入
底深のテボから平ザルに移され、湯切りは4回、麺が丼に投入されます
具材が添えられます


15分程で着丼

 

醤油らーめん 780円 150g(麺量)
https://youtu.be/UjIlbFBi91U

f:id:ramenhenzin:20181112215340j:image

スープがなみなみ入るサイズの大きめの高台丼
食堂系のラーメン以外では、もう昨今では珍しくあまり出会う事の無いなみなみ配合
濃い琥珀色の清湯スープです


上面を支配する脂はかなりの量
香りは醤油中心に動物魚介野菜系と至極複雑
本能的にこれは美味しそうと視覚嗅覚してしまうどこか懐かしくも洗練された上の品の香り

f:id:ramenhenzin:20181112215407j:image

具材は
焼き色故、肉の旨味たっぷりで絶妙な脂味に中毒性が強い大振りの豚肩ロース1枚
香り高さが青々しい輪切の京都産九条ネギ
磯の香り豊かな海苔
若干、塩気が強くスープ上で甘味が絶妙な地味ながら存在感のあるメンマ

f:id:ramenhenzin:20181112215422j:image
スープをいただきましょう
ズルズルと口に含んで舌で感じた後は、スーーーーーーー(笑)ッと喉を通って行きます
毎度の事、見た目程の脂っこさが無いのに、先ず驚く
肩透かしを食らったかのように、サッパリとしていて、クイーっと身体に馴染み自然と吸い込まれるかの如くの錯覚に陥る
先ずは、この見た目と味覚の違いに驚嘆する

 

再度、確かめたい衝動にかられ、再度スープを啜り、舌で転がし、鼻腔に集中して、ゴクッと飲み込み、ひと息付き、先程のスープの香りと空気の香りの違いの中で判別して行く

そうすると
最初の入口は、難易度が低くサッパリと寄り添い易い、次に舌で転がすと出汁に裏付けられた醤油のカエシの香りが鼻を心地よく抜けて行く、そして瞬時に複雑な出汁の波が押し寄せて来て、飲み込むと同時に波が静かに引いて行って行く事に気づかされる
この後半の難易度が高い

 

旨味において、何か一つ二つが突出してるわけではなく、全てが均等な波
一部、食材にピックアップすれば、豚も下支えになっているのではなく、主張がある
鶏豚魚介野菜が全てが均一過ぎるくらい均一です

そして、塩気と甘味が嫌らしくない

 

ほぼ素材の塩味と甘味で抑えられており、ここにうま味調味料なんかをバーっと振りかければ、もっとはっきりわかりやすい旨味になるのだろうが、折角の素材の良さを完全に殺してしまうかの如くの明らかな愚行をしていないのは明らかだと分かる程良い「塩気と甘味」

 

ゴスペルに例えるならば、5人がそれぞれの音階の仕事をキッチリこなしつつソロワーキングの如くの有様、まとまっている至極のハーモニーの如くの5人が主役のグループ

この味表現は唯一無二の感じだと思います

 

普通は何か上がれば、何か落ちる
そうではなく、全てが均等表現
そして、まとまらせるのが至極難しい、多種多様な食材の複雑化する旨味を「サッパリだが奥深い」というシンプルに着地させている腕は、流石としか言いようがない…

 

この味表現は
支那そば」と言いつつも、若干プログレッシブ要素が強くなった近年の支那そばや本店系にも無い感じと想定され、この感じは藤沢時代の昔の支那そばやの系統だと想像してしまいます

 

醤油ダレのカエシも前回レビューにも記載した通り、抑え目です
あくまでも、カエシの裏に潜む均等な出汁の旨味を味わうスープです
カエシにしても出汁にしても、共通して強く主張してくるのは素材の香りの強さ

 

近年の鶏そば系にあるような生醤油系のキリッとしたわかりやすいカエシではなく、抑え目ながら醤油の香りの広がりに重きを置いたかの如くのカエシ、醤油感は薄いというより抑え目だが香りが強く、故に余韻が異常に強い
醤油がカエシではなく、醤油の香りがカエシのような錯覚すら覚える

 

旨味を認識する根本には香りがある
わかりやすい塩味も確かに重要だが、それ以上に香りや風味が重要
食事をより良く心地良くする事において、香りは重要な要素
風味とは何か?風味は味を認識する事に置いて、非常に重要なファクターとなっているのだという基本事項に原点回帰させられる深いスープです
非常に美味しいし、深い洞察に回帰させられるスープです

藤沢時代のお弟子さん
藤沢時代の支那そばやの味を忠実に再現しているのであれば(だと思いますし、であれば藤沢時代の支那そばやを味わえる貴重な味)、スープ食材は…鹿児島産鰹の本節、屋久島産鯖節、メジマグロの削り節、秋刀魚節、酒田産飛魚の焼き干し、羅臼産昆布、椎茸、ホタテ、干し海老、根昆布、豚骨、豚足、豚背骨(藤沢は神奈川産高座豚だが東松島は杜仲高麗豚)、鶏関節、モミジ、鶏一羽(鶏は岡山産山水地鶏…佐野実氏が独自開発し地鶏)…

京都産九条ネギ、小笠原の塩、紀州天然醸造醤油…

f:id:ramenhenzin:20181112215535j:image
自家製麺
北海道産「春よ恋」を中心に数種の国産小麦を独自にブレンド

モンゴル産の天然塩から作り出したかん水を使用したシルキーな麺
これによりソフトで滑らかにも関わらずコシのある麺に仕上がり
支那そばやで独自開発した生グルデンにより、シコシコしたコシが生まれ湯で延びが遅くなる仕様

 

麺を啜りますと
麺に長さがある為「ズルズルズルズルズルーズルズルズルー」っと啜り時間を長く楽しめ、麺肌が稲庭中華そばの如くの水分含有感、優しくも小麦の風味が豊かな為、贅沢な口運び感を堪能出来る
舌触りも稲庭に似ていると個人的には思ってます
食感は独特の優しいコシがあり、喉越しは良質な小麦お粥のような感じです

f:id:ramenhenzin:20181112215558j:image

切り刃20番手、加水率38%(気候により変動)、細ストレート麺、断面は平打ちで薄くして20番より細く感じさせてるかもしれません


製麺の段階から麺に水分を程よく含ませ、麺茹で後提供しても伸びない、啜り進めも伸びたと感じない錯覚の麺


多加水で上質なかんすい効果だと思いますが、最初から水分を含ませて、ある種最初から伸びている状態が故に、食事中伸び易そうと想定しながらも実は伸びない麺です
柔目と感じても伸びる事は最後までありません

 

麺を啜ると、一杯への見方が一気に一変します
スープを味わった時の感慨深い余韻から一変し、麺が主軸の一杯だと気付かされるのです
スープを味わう麺ではなく、麺をスープで味わう一杯だと気付かされる

f:id:ramenhenzin:20181112215653j:image

それぐらい、麺とスープがお互いあるべくしてある一杯なのだが、その認識が啜れば啜る程、さらに麺側に傾倒して行き、麺主軸でスープは麺を味わう為の必材なだけだと気づく

 

その考え方は、支那そばやのお弟子さんにも確実に受け継がれており、この「醤油らーめん」に、その魂を深く感じずにはいられない

 

麺が主軸の一杯
麺を啜る一杯
啜るという味を強く感じる一杯
味変はスープと麺だけで成り立つ一杯


やはり美味しいです
進化させながらも、師匠に敬意を払い、支那そばやの原点の味を伝え続ける店主
藤沢時代の支那そばやの味、即ちは支那そばやの原点の一杯を受け継ぐ極めて貴重なお店
そんなお店が近くにある事に感謝せずにはいられません
やはり、毎度の事、深い感慨を受ける一杯でした
ごちそうさまでした

今回、大盛(麺225g)にしなかったのですが、明らかにスープの味が違いました
大盛だと、食べ進める中でスープに溶けて行く麺の小麦粉の量が、麺量多い分過多になり、スープが薄まります(スープ第2段階)
着丼時の小麦粉がスープに溶け込まないスープ第1段階時は普通盛(麺150g)も大盛(麺225g)も同じなのですが、小麦粉が溶けて行く食べ進めに明らかな差があったのだと、久しぶりに普通盛りを食べて気づかされました
普通盛りで点数アップです
※2
続いて「麺匠 独眼流」へ向かいます